よはくのらくがき

2005年から社会人、2016年からフリーランス。時折会社員へと往復したり、色々働くを実験・実践中。気づいたこと考えたことをまとめていきます。

採用の目的が変わってきた

企業における人材採用の目的が、数年前から今、そして今から数年先に向かって、

変わっていくのではないか?と思う出来事にいくつか遭遇する機会があり、

このタイミングで「採用の目的」について、自分なりに考えをまとめてみることにする。

(ここで言う「採用」は、社員としての採用だけでなく、もう少し広義の仲間集め、と解釈する。また、本文では採用の主体は企業として記述する)

 

■採用には3つの目的がある

まず改めて、採用の目的は以下の3つで説明できると考える。

 

①やるべきことをやるため(Mustの推進)

 企業には経営理念や存在目的、経営目標がある。売り上げ向上や、新規事業の開発など、事業に直接関わることもあれば、コーポレート部門と呼ばれる、会社を支える役割など、やることは多岐にわたっている。

 これらの「やるべきこと」を遂行することで、経営は推進され、結果として目標が達成される(達成されないこともある)。

 この「やるべきこと」をやる上で、(特に成長志向の強い会社ほど)現有のリソースでは足りないことが多く、これを補うために、人を採用する。

 

②できることを増やすため(Canの拡張)

 特に成長フェーズにある企業や、新規事業領域に進出する企業であればあるほど、「今いる人ではできないことをできるようになる」必要性やWillが生じてくる。

 これらを実現するための採用、という位置付けが、採用の目的の2つ目である。

 「ハイクラス」や「クリエイター」、「新規事業人材」の登用であったり、上場準備にかかる企業が上場を経験した人材を採用する時などはこれに当てはまる。

 これまでに自社で保有していないスキルをもった人材を採用し、定着するプロセスでもあり、ものすごく大雑把な言い方ではあるが「組織力の高い企業」でないと、活躍してもらうことができず、早期離職になるケースがある。

 (そしてこのケースは多く見られる)

 

③やりたいことを増やすため(Willの拡張)

 3つ目の、そして今回この記事を書く動機にもなった要素が、この「やりたいこと、Willそのものを増やす」が、広義の採用における3つ目の目的である。

 熱量の補充、とも言うこともできる。

 

採用の目的は、上記のうちどれか1つに当てはまる、というよりは、これら3つの要素を複合的にもっていて、それぞれのケースにおいて割合が異なってくる、という捉え方が適切だと考える。

 
■目的の重み付けが、時代と共に徐々にシフトしてきた
かつて「ある程度正解が決まっており、推進力の大きさが企業の成長や成功を裏付けていた時代は、優先順位は①>②>>③であった。
経営がやりたいことを実現するための採用(リソースの確保)、という文脈が強く、
そうなると、むしろ③は統一性を損ない、極端なケースで言うと分裂のきっかけにもなりうるので、要素として無い方がよかったとも言える。
(表向き、求職者に向けてはそうは言わなかったし、言わないが)
 
時代が進み、変化が速く不確実性が高い「正解が無い」時代になったことで、
企業の成長に向けて②の重要性が増してきた。
これらは「ジョブ型採用」や「ハイクラス採用」という形で具現化され、主にベンチャーやスタートアップにおいてフェーズが変わるシーンにおいてとても重要な位置付けを担っている。
ここでも③の「やりたいこと」は、経営陣とすりあっているか、あるいは意志や熱量は弱い方が好ましかったのではないか、と考える。
(「自ら考える、ただし経営陣と意思が対立しない」人材が求められていたように思う。ニュアンスが伝わりづらいが)
 
そして今後において、③の位置付けが変わり、「意思や熱量」の重要度が高まってくるのではないか、というのが、今回主張したい点である。
 
■ベクトルが(やや)異なる熱量は何をもたらすか、なぜ重要になってくるか?
雑な言い方をすると、組織において「ベクトルが異なる熱量」を受け入れることは、カロリーがかかる、面倒なプロセスである。
スムーズに物事を進めるだけであれば、方向性の違いには折り合いをつけたり、押さえ込んだり、取り込まなかったりする方が、よほど効率的だ。
(もっと言うと、意思を持たないAIやコンピュータを導入し、使いこなすのが最も効率的である)
 
にもかかわらず、なぜベクトルが(やや)異なる熱量が重要なのか?と言うと、
「予測できない化学反応」が、既存の熱源にも刺激をもたらし、新たな熱量の呼び水となること、及び、
特に自律分散的に成り立つ組織においては、一人ひとりの熱量はほっとくと分散傾向にあり、
かつ変化がないと「飽きる」原因にもなる。
一定期間毎に新たな熱量や、それによる化学反応が生じることは、これらを予防し、組織の活力を維持向上させることに繋がるからである。
 
もちろん「異常値」や「エラー」、「失敗」も増えるし、そもそも非効率で面倒くさいプロセスではあるのだが、
これらを嫌がらず楽しむ、楽しめることは、これから益々重要になってくるのではないか、と考える。
 
■採用を行う組織は、③をどう位置付けるか、外部の(方向性の若干異なる)熱量をどう扱うか、を考えよう
まだまだ多くの企業や組織は、「オンボーディング」のプロセスに、「新規参画者をどう取り込むか?」という視点で臨んでいるように思う。
 
しかし、方向性の若干異なる熱量と、それを受け入れることで起こる化学反応を楽しめるかどうかは、組織がより強くなる上で重要な過程であり、今後益々重要になっていくと考える。ここにチャレンジすることは、かなり価値があると考える。
 
 
■新規参画(検討)者は、①〜③を意識しよう
逆に、組織に新規参画する、または検討する人は、
自らに①〜③のどの要素が求められているのか?
①〜③の視点で、自らは何をもたらすことができそうか?
を考えることが大事になってくる。
①やるべきこと、求められていることをやる、だけでは変化には対応できない。
②できることを発揮する、だけでは味気ない。
③組織に関わることで、自らの熱量はどう変化するのか、その(展開が読めない)変化に自らがワクワクできそうか、
に思いを馳せることは、働く場や活動する場を選ぶ上で、かなり大事になってくる。
これは正社員、フリーランス、ベンダーなど、立場を問わない。
 
・・・書きたいことを思いつくまま書いたら、かなり発散的になってしまったが、
この記事が組織や個人の熱量との向き合い方を考えるきっかけになったり、これを読んで頂いた方と熱量について議論できる機会があれば良いなぁ、と思う。